自治体DXの記事・事例

坂町が実践する「重層的支援」のDXと「相談管理システム」による情報連携と効率化
分野:
児童相談
高齢者福祉・介護
生活保護
発注機関: 安芸郡坂町役場

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会社名
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株式会社ヴィンテージ

概要

広島県坂町(さかちょう)は、福祉分野における課題解決と行政サービスの質の向上を目指し、株式会社ヴィンテージの相談管理ソリューション「ウェルビーイングワン相談管理 for kintone」を導入しました。

この導入は、国が推進する「重層的支援体制整備事業」において、関係機関との連携強化と業務効率化(DX)の核となる取り組みとして位置づけられています。

導入前の課題:複雑化する相談と連携の壁

坂町が「重層的支援体制整備事業」を推進する背景には、全国と同様に進行する人口減少、超高齢化、単身世帯の増加といった社会構造の変化がありました。
こうした社会的背景により、町民からの福祉に関する相談は「複合化・複雑化」し、「ダブルケア問題」や「8050問題」など、一つの制度や部署だけでは解決できないケースが増加していました。

導入前、坂町の「保健・福祉総合相談室」では、以下のような課題に直面していました。

情報共有と業務効率の課題

  • 相談受付や記録管理が紙やWord、Excel中心で、情報の検索・共有に時間がかかっていた

  • 関係機関(役場内の各部署、社会福祉協議会、地域包括支援センターなど)との連携が口頭や手作業での調整中心となり、職員の内部事務負担が大きかった

  • 相談記録の重複が発生したり、過去の支援経過を追うのが困難だったりするなど、非効率が生じていた

住民サービスの課題

  • 支援が「児童」「障害」「高齢」「生活困窮」といった属性や制度単位での縦割りとなり、「住民の悩み」起点ではなく「行政都合の支援」となっていた

  • 複合的な課題を持つ相談者が関係機関をたらい回しにされ、同じ話を何度もさせられるといった「機会損失」につながる可能性があった

坂町はこれらの課題を克服し、「住民の悩みを起点に解決していく」「先回りで支援していく」体制構築を目指す方針を掲げました。

導入内容:DXによる相談支援の「基盤」構築

坂町は、複雑化した相談に「横断的に複数の部署が協力」して対応できる体制を目指し、「デジタルの力を最大限に活用」したDXを推進しました。

この取り組みにおいて、株式会社ヴィンテージの「ウェルビーイングワン相談管理 for kintone」は、相談記録を一元化し、関係機関でタイムリーに共有するための中心的な基盤として導入されました。

  • サービス名: ウェルビーイングワン相談管理 for kintone

  • 提供元: 株式会社ヴィンテージ(社会福祉協議会向けソフトウェア開発・販売)

  • 導入形態: kintone(キントーン)を活用したソリューションパッケージ

「ウェルビーイングワンシリーズ」は、重層的支援体制整備事業を推進している全国の自治体のうち約11%が利用している実績を持つ相談管理システムで、「紙の相談受付からの脱却、住民への支援に集中できる環境構築」をコンセプトとしています。

主な機能と導入の目的は以下の通りです。

ウェルビーイングワン相談管理 for kintoneにおける主な機能

1 相談記録の一元化とリアルタイム共有

  • 自治体(役場)、社会福祉協議会、地域包括支援センターなどの主要機関で、相談の記録をタイムリーに連携・共有

  • kintone上で記録を共有することで、自分の担当以外の相談経過もすぐに追跡でき、二重対応の防止を実現

2 事務作業の効率化

  • 相談内容をシステムに入力するだけで、厚生労働省に提出する報告書(重層的支援体制整備事業)をワンクリックで出力できる仕組みを構築

  • 紙やExcelで手間がかかっていた家系図(ジェノグラム)の作成も、アプリパッケージ内の機能で簡潔に実現

坂町の導入目的・工夫

坂町では、「ウェルビーイングワン相談管理 for kintone」への記録・登録負担を軽減するため、電話、来庁、訪問といったすべての接点において、AIを活用した要約機能などの導入も行い、情報資産を容易にデータベース化する構想を企画し、関連業務における業務全体に対するDX全体設計も行いました。

導入による効果と今後の展望

本格的な運用はこれからですが、すでに以下のような効果が確認され、今後への大きな期待につながっています。

  • タイムリーな連携と複合事例への対応: kintoneを活用することで、役場、社会福祉協議会、地域包括支援センター間でのタイムリーなやり取りが可能になり、複合的な事例に対する伴走支援が進められている

  • 情報共有の促進: 役場、社会福祉協議会、地域包括支援センターの3機関で相談記録を連携・共有できることが、非常に意義深いと評価されている。支援体制が整うことで、時間短縮と効率化が期待されている

今後の展望:地域共創のハブへ

坂町は、「ウェルビーイングワン」がもたらすデータ共有の基盤を、町内の課題解決にとどまらず、周辺自治体との連携強化にも活用していく方針です。

  • 広域連携とノウハウの共有: 坂町を含む「安芸郡4町」(府中町、海田町、熊野町、坂町)と共同でこのDX施策を推進・共同調達し、相談記録のノウハウを共有し合える体制を構築することで、広域的な課題解決を目指す

  • データ活用による社会的支援の充実: 蓄積された相談データを活用しながら、相談に至る背景を分析し、地域における必要な社会的資源(自助、共助、公助など)を検討することで、地域づくりや社会参加事業といった支援策につなげる

坂町は、デジタルの力を活用し、単なる内部事務の効率化だけでなく、住民の「機会損失」を回避し、より質の高い「全世代・全分野」を包摂する相談支援体制の構築を目指しています。